アニメAnotherを見る

 以前Anotherをいとこに見せられて血が恐しかったので逃げ出したと書いた。

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 それ以来このアニメは一度も見てこなかったのだが、先日ニコ生で一挙放送してゐたので予約して見てみた。あれからずいぶん経ってグロテスクな表現がだいぶ平気になったといふ変化もある。
 まあファイナル・デスティネーションみたいなものだと思った。この映画はむかし房総半島で友人の父親と摂った、静かな昼食の合間に見た事があった。かれの私宅はスカパーと契約してゐて、シリーズを通して流れてゐたのをTVで見た。飛行機事故から逃れた者らが見えない死の運命に襲はれるといふ話だが、まあ落ちてきたガラスの板に圧死して、明らかに飛散した鮮血がCGだとわかるB級ホラー加減だった。
 Anotherは一応ミステリ要素らしきものはあるもののミステリは薄く、たんに生徒らが学校生活を送る過程で人が次つぎに死ぬ。傘の石突きに刺さったりエレヴェータが落下したり庖丁で自殺したりクルーザーに巻き込まれたり、グロテスクな描写が続き、人が死ぬ法則を推測したり説明したりする。私はグロテスクな描写で昂奮するたちではないので、冷ややかな目で見た。話の途中で電話がかかってきて重要な話を聞きのがしたり、主人公の勘が恐しくにぶかったりするのはもはやある種の常套といふ気がするが、作者に都合がよすぎるのは納得できない。ヒロインも綾波レイのやうに陰気で、終盤で唐突に、ミステリのためだけに百合にされてしまった感じが否めない。
 だから、私はこのアニメが本当におもしろいのかと問ひたいぐらゐなのである。
 伏線はいくつか張ってあるが、全体としては長すぎると思ふ。短くまとめた方が一層いいだらうと私は感じた。筒井康隆は2010年10月12日の偽文士日碌にかう書いてゐる。

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山田風太郎文学賞の候補作品はいずれも長大で読むのに難渋。貴志祐介悪の教典」などは四百頁を越す大冊が上下二巻であり、綾辻行人「Another」も七百頁に近い大作なのである。

 第一回山田風太郎賞綾辻ではなく貴志に決ったのは妥当な判断である。なほこの時森見登美彦の『ペンギン・ハイウェイ』も候補になったが、これが日本SF大賞を受賞したのはその年のSFがそんなに不作だったのかと思ふ程不可思議なことで、山田風太郎賞を受賞させなかったのは慧眼といふべきである。

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