個人的デリシャスパーティ♡プリキュアのベスト回

まへがき

 昨年度のトロプリにつづけてデパプリを見てゐる。私がいだいてゐたプリキュアに対する偏見は多少はがれ落ちてきて、子供向けアニメとしてのある程度の役割はうすうす理解してきた。
 しかし声を大にして言はせてもらへば、昨年度と今年度の作品とをくらべると、明かに今年度の方が一話一話の作品の質は高く思へた。トロプリでいいと思へたのは第38話「決めろ! あすかの友情スマッシュ!」だけなのに対して、デパプリは比較的多かった。その理由としては昨年はまだまだ新型ウイルスの余波が続いてゐたとか、単純にメイン脚本の詰めが甘かったとか、まあ複合的要因はあるだらう。

 さて現時点でまだデパプリは完結してゐないが、年内の総括として、いままでの回のうちでよかった回をあげておく。昨年度は《少しでも気に入った回》としてゐたのだが、これはあまりトロプリの脚本でいいと思へるものが少かったからである。

よかった回ピックアップ

  • 第11話「ジェントルーの罠!ゆいとらん、テストで大ピンチ!?」
     しばらくデパプリは低調だったのだが、この話は少しおもしろい。
     Is this my pen?といふ英文をつかふ機会なんてないでしょといふらんのツッコミにはにやりとしたし、食ひ物のことわざだけはまともに答へられるといふネタもよかった。伏線回収(?)もあった。そしてプリキュアに敗れた生徒会長が正体を現したと思ったら実は心を操られてゐたといふ意外性は、なかなかのシチュでちょっと昂奮しさうになった。
  • 第18話「わたし、パフェになりたい!輝け!キュアフィナーレ!」
     私のおすすめ回のひとつ。
     この話は感極まった。戦闘も見応へがあり、4人目のプリキュアになる直前の場面は胸にぐっときた。
  • 第20話「あまねのマナーレッスン!憧れのレストラン」
     私のおすすめ回のひとつ。
     満足がいく日常回だった。一流のレストランへ行くのにマナーを不安がってるあまねと、両親から受け継いだ上品さを体現できるここね。ふたりの関係をえがいてゐたのがよかった。お互ひのダンスで締めるやり方には、おのおのの関係を浮かびあがらせる巧みさを感じた。
  • 第21話「この味を守りたい…!らんの和菓子大作戦」
     ふつうの回だけど、最後の老店主のほほゑみなどはまあよかった。
  • 第29話「おいしいパラダイス!レッツゴー!クッキングダム!」
     ふつうの回だけど、セルフィーユといふ登場人物がまあよかった。
  • 第35話「ここねとお別れ!? いま、分け合いたい想い」
     私のおすすめ回のひとつ。
     すなほで丁寧なつくりの、満足がいく日常回だった。いつもの過剰な演出はなりをひそめて、イチョウの落葉などは演出が引き立ってゐた。話の方も親子関係といふ普遍のテーマを堅実にかたちにして、静かな感動があった。作画もヴェテランの手によるものだけあって、乱れたところがない。
     全体として地味さうに見えながらも、よく整った回であった。と、最近高畑イズム(なる言葉があるとすれば)に影響されたリアリストの私はかう考へるのである。
  • 第39話「お料理なんてしなくていい!?おいしい笑顔の作り方」
     突出してゐないふつうの回だけど、なかなかおもしろかった。
     誰もが忘れてゐた主人公の特技であるサッカーを1話ぶりに見た。以前ニコニコ大百科を見た時に、主人公だけほかのキャラと比べて掘り下げが足りないといふ意見を目にして、たしかにさうかもしれないなと思ったものの、この話で久しぶりに自分の意見をハキハキとしゃべる主人公や、その母子関係を目のあたりにした気がする。
     さらに印象的だったのはブンドル団のセクレトルーが自分の信念を語るところで、それを聞いて主人公がハッとする。そして、その後ベンチでおばあちゃんの言葉だけでは足りなかったと、この話のメインストーリーの友人に語るところ。友人は父親をねぎらってやりたいと苦悩するが、その父親も娘をおもひ世話を焼く。このやうに自身の心情を簡単に吐露して最終的に解り合へる父娘はめづらしい気がするけれど、まあ子供向けとしてわかりやすさを優先した結果だ。 
  • 第44話「シェアリンエナジー!ありがとうを重ねて」(追記 2023年1月30日)
     今期の総決算。なかなかのトンデモ展開だったが、後半にかけての作画は迫力あるものに仕上がってゐる。

あとがき

 ここまで評しておいてデパプリを否定するみたいだけど、デパプリは前作よりもストーリーが中心になってなかなか凝ってゐるものの、少しわかりづらいふしがある。
 また、お菓子がテーマのキラキラ☆プリキュアアラモードで実際にお菓子をつくってゐたやうに、食事がテーマなので、食事マナーレッスンなり料理作りなり、当初期待されてゐたなにかしらの食事に対する子供向けの教育要素がほとんどうすかったのは残念だった。

 それに、最近TVerで初代プリキュアふたりはプリキュアを第10話まで見てみたら、その質の高さを感じずにはゐられなかった。トロプリとデパプリよりも圧倒的に完成度が高いと思ったほどだ。
 なによりすぐれてゐるのは態度のリアリティ人間関係のリアリティといふ点だらう。
 態度のリアリティは、主人公の美墨なぎさの独白によくあらはれてゐる。アニメの冒頭に必ず入る独白は、前回までのストーリーをふりかへる役割を果してゐる。その独白で主人公は、なぜ自分がプリキュアにえらばれたのか、ずっと釈然としない気持を語ってゐるのである。
 また、第1話でメップルの携帯型変身装置が窓から飛び込んできた時の、主人公を反応を見てみればわかる。窓からの闖入物に対してラクロスのスティックでつんつんと恐れながら触れてゐるのだ。これは、たとへばHUGっと!プリキュアの第1話で赤ん坊のはぐたんに対して、主人公がまったく不思議がらずに抱っこしてゐるのとは歴然とした差だ。前者にはリアリティがあるが、後者は通俗的なのだ。私は前者の方がより共感しやすい。
 人間関係のリアリティは、主人公のなぎさと弟の美墨亮太とのリアリティのある兄弟関係の描写にも顕著だが、特に第8話「プリキュア解散!ぶっちゃけ早すぎ!? 」を見た時にほかにはないものを感じた。この話では、主人公は相方の雪城ほのかと、たんにプリキュアとして相手と付き合ってゐるにすぎず、日常的な友達ではないといふ理由から仲違ひしてしまふ。これは当然の通過儀礼といへる。プリキュアは悪を退治する職業的な仕事のやうなものであり、プリキュア同士の関係は仕事仲間のやうなものだからだ。無作為にえらばれたプリキュア同士が必ずしもすぐに友達になるわけではないのが自然であって、トロプリにもデパプリにもさういふ描写がなかったのは不思議だった。
 また痛切に感じたのは、メインの登場人物どうしの人間関係をうまく書ける限界の人数はふたりがちょうどいいのではないだらうかといふことだ。当然ながら、1年間で約50話もの話数をこなして書いていくうへでは、人数が少いほどやりやすく、結果としてふたりがいちばん書きやすいといふことになる。「Yes!プリキュア5」などは見てゐないのでなんとも言へないが、トロプリは5人だし、デパプリは4人に加へて周辺の人数が多いので、うまく書き切れてゐない原因になってゐる気がする。だが、それぞれの脚本家どうしの連携がうまく取れてゐない可能性もあり、ここらへんはプロデューサーの手腕次第である。
 しかし、ふたりといふ人数は、4作目「Yes!プリキュア5」以降ない。方針転換した詳しい経緯は加藤レイズナプリキュア シンドローム!』幻冬舎)の鷲尾天へのインタヴューにあるから、そちらにゆづるとして、いまではもはやふたりといふ人数は、あくまで美墨なぎさ雪城ほのかといふ初代プリキュアのために用意されてゐる数なのである。だからこれからもプリキュアは最低でも3人でなくてはならないのだらう。

追記(2023年1月30日)

 完結した。
 黒幕の正体はわりと早い段階からわかってゐたので、意外感はなかった。最初からゐるのにもかかはらず、登場がほとんど少かった影のうすいキャラだったから、うすうす勘づいてゐたのだ。しかし黒幕がなぜそんなに食物を恨みに思ってゐるのかは、よくわからなかった。黒幕についての描写が足りなかったと思ふ。
 拓海の恋愛もとくに進展がなかったが、まあ昨年のトロプリよりはストーリーがまとまってゐてよかったのではないかと思った。
 それにしてもてっきり最終話の脚本はシリーズ構成の平林佐和子さんだと思ったのだが、伊藤睦美さんだった。伊藤さんの脚本はここね中心の回が多く、デパプリではここね担当なのかなと思った。

 さて次作の「ひろがるスカイ!プリキュアだが、どうやらプリキュア20周年だといふ。そのせいか鷲尾天がプロデューサーに戻るやうで(正確には企画も担当する)、東映のやる気を感じた。クール系ではない青髪の主人公は、いままでの傾向からしてはめづらしいだらうし、ソラシド市なる名前を聞いたら、ドレミファ市もあるのかと思ったりした。

〈前回までの記事〉

winesburg.hatenablog.com

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