アニメ平家物語

 古川日出男の『平家物語 犬王の巻』河出書房新社湯浅政明がアニメ映画化すると発表したのは2019年のことだ。先日PVができて、2022年に公開されることになった。
 しかし先程の報を聞いておどろいた。これとは別のアニメ版「平家物語」をフジテレビで放送するといふのだ。これは池澤夏樹全集の『現代語訳平家物語』が原作で、翻訳は古川日出男、出版社は河出書房新社、アニメの制作会社はサイエンスSARU、放送期間は2022年である。
 なんと湯浅の映画となにからなにまで同じなのだ。なにかあるとすぐに気づいた。湯浅政明は2020年にサイエンスSARUの社長を辞めたが、このアニメにも関係してゐるのではないか。

 そのあとFODでアニメ版の第1話を見た。琵琶法師の、未来予知する娘といふ、原作にはない要素を入れてゐる。この娘が琵琶をひくのだが、幼いのに演奏がうますぎるといふ違和感がある。途中途中に語りが入る場面では、語る人物は成長したその娘ではないかと思った。
 第1話なのでまだなんとも言へないが、私は最初から冷めた目線で見てゐた。古川日出男について心配だといふ要因もあり、特に期待するわけではなかった。

【追記 2022年2月28日】
 『平家物語 犬王の巻』が文庫に入ったので見てきたが、相変らずの誇張文体で、さらに冒頭から物語を語ると宣言してゐてわざとらしい文章だった。


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 山田尚子監督のインタヴューも見たがあまり感心しなかった。
 私は小谷野敦の「「平家物語」と勧善懲悪」と同じ意見なので、『平家物語』を評価してゐないし、古典だからといってすべての古典がよいとも思ってゐない。

【追記 2023年2月16日】
 書き忘れてゐたので補足しておく。
 湯浅の映画「犬王」を昨年見た。端的に言ふと、まあふつうのパンクロック映画だと思った。私のレヴューを引用する。

手塚治虫どろろとそっくり
 冒頭の、盲人から見た世界の描写はよかった。お父さんの霊が小さくなってハスキーボイスで語りかける所はマインド・ゲームを思ひ出した。
 しかし橋の上やたもとでパンクロックをがんがんに弾いて歌ふ所は、うーん、耳にがんがん響くだけであまりおもしろくない。天皇に見せる所になってやうやくおもしろくなる。さらに父親が力を得るために息子を呪ひの犠牲にして、犬王が手足を取り戻すあたりは、手塚治虫どろろとほとんど同じである。
 古川日出男の原作も通俗的な感じで、平家の学者の松尾葦江が《読後感を一言でいうとー小説を読んだのではなく「絵のないマンガ」本を読んだ気がする、でしょうか。この作家の他作品を読んだことがないので、こういう文体、構成が本作品限定なのかどうかが分からないのですが、粗筋と擬音語しかない、マンガの吹き出しを拾って読んだような後味です。》《商売柄、表現の粗っぽさと、古典語の誤用とが気になって爽快に読めない(例えば五百はイホ、魚はイヲで中世では通音かどうか、「まるっきり」という語は通常否定表現に続くetc.)のは私だけの事情だとしても、能や平家語りのたたずまいとはあまりに遠すぎる。》と書いてゐて、やはり古川は駄目だと思った。
https://mamedlit.hatenablog.com/entry/2022/06/19/141844
 湯浅政明のアニメとしても、マインド・ゲームを超えられてゐない。

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