北杜夫が断った文化勲章

北杜夫の娘の斎藤由香は、サントリーに入社して父親と同じくエッセーなどを書いたひとだが、その北との著書に『パパは楽しい躁うつ病』(新潮文庫)がある。 このあとがきに、北が宮内庁からの章を断った話が出てくる。文化の日とあるから、おそらく文化勲章…

ハンターハンターは読解力が必要

大学のころ、一年下の男女がつるみ合って息をするように「ハンター×ハンター」の話ばかりしてた。 仕方なく読んだ。 たしかに面白いマンガだと思う。 同時に、珍しく読解力を要求されるマンガでもある。 『イギリスはおいしい』の林望は子供にこう促している…

北杜夫の純文学・エンタメ・エッセー

純文学 幽霊 白きたおやかな峰 エンタメ 怪盗ジバゴ 奇病連盟 高みの見物 エッセイ どくとるマンボウ昆虫記 どくとるマンボウ青春期 母の影 パパは楽しい躁鬱病 不満な方へ 北杜夫の読むべきではない三点 純文学 幽霊 幽霊―或る幼年と青春の物語―(新潮文庫…

ことしもプリキュアをみる(ひろがるスカイ!プリキュア)

よかった回 第5話「 手と手をつないで!私たちの新しい技! 」 【個人的ベスト】第9話「 勇気の翼、飛べキュアウィング!! 」 第14話「 スカイランドへ!憧れのあの人との再会 」 【個人的ベスト】第18話「 アゲアゲ!最強の保育士 キュアバタフライ!! 」…

友人へ――「プリキュア、やっぱり僕より全然好きじゃん」への返答――未来への方向づけ

高校時代に男のプリキュア好きとしてからかっていた友人から、思ってもみない言葉がかえってきた。「プリキュア、やっぱり僕より全然好きじゃん」というのだ。 自分はすこしく困惑した。この三年間、ナントナクでトロプリから見始めた習慣を惰性的につづけて…

小説の勉強

二〇二三年一月、佐藤厚志に芥川賞が授与された。かれはインタヴューで、大江健三郎の文学論『新しい文学のために』が英文科の課題として出されたことが小説執筆の契機としつつ、しかし実際に大江の小説を読むことがいちばん小説を書くうえで参考になったと…

2022年度に読んだ秀作・凡作・駄作大賞

2022年度(2022/4/1~2023/3/31)に読んだ本のなかで、秀作・凡作・駄作だと思った本を3つづつ挙げる。その本の発表時期が2022年度とはかぎらない。 秀作大賞 1等賞 大岡昇平『現代小説作法』ちくま学術文庫 2等賞 渡部昇一『知的生活の方法』講談社現代…

〈評論〉星新一を全部読む(読まない)

実はショートショートはほとんど読んだ 星新一が書いたノンフィクション 筒井康隆いはく「星新一はないないづくし」 星新一の真価はエロ 下品な星新一 星新一とソ連 星新一がほめたショートショート 次回の星新一テーマは「星新一と純文学」かも? 参考文献 …

社会学者・見田宗介の不倫

東大の見田宗介はいはゆる社会学者だとされてゐるが、富永健一ほど実證的なわけではなく、むしろ哲学的なので私は社会学者?だと思ってゐる。高校の頃、国語教科書に載ってゐた見田の評論を読んで、この人のことは記憶してゐた。 その見田が2022年4月に亡く…

舞城王太郎と賞

大江を援用したラノベをさがせ! 尾崎真理子のラノベに対する認識のズレ 私の舞城に対する評価 東野圭吾の舞城王太郎選評 題材としての酒鬼薔薇事件 あまり有名ではない三島由紀夫賞 「熊の場所」の書き直し 参考文献 大江を援用したラノベをさがせ! 『大江…

大江健三郎の文章の癖を真似したい人たちのために(随時更新)

随時更新 以前『もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)をぺらぺらめくってみたら、夏目漱石とか太宰治とかいろいろあるなかで、大江健三郎も載ってゐた。あのゴツゴツとした大江構文を期待して読んだが、どうみても初期の大江の文章…

辞書の「神無月」の語源はどうなってゐるのか

はじめに けふ初詣にでかけるあひだに『新明解語源辞典』を読んでゐたら、「かんなづき」の項目にかう書いてあるのを見つけた。 かんなづき【神無月】陰暦十月の称。「かみなづき」の転。「かみなづき」の「な」は連体修飾格を示す助詞「の」と同じような意…

個人的デリシャスパーティ♡プリキュアのベスト回

まへがき よかった回ピックアップ あとがき 追記(2023年1月30日) 〈前回までの記事〉 まへがき 昨年度のトロプリにつづけてデパプリを見てゐる。私がいだいてゐたプリキュアに対する偏見は多少はがれ落ちてきて、子供向けアニメとしてのある程度の役割はう…

淫靡な図書館(1)

小学生の時に地元の図書館で同級生の弟たちに会った。下村と瀬田といふふたりの、それぞれの弟らは、図書館の白くくすんだ受付で漫画はありませんかとたづねて、緑色のエプロンのをばさんに、ない、と返された由だった。ふたりは退屈さうにしてゐた。隣の区…

読んでもよくわからない本のはなし3『パルプ』

高橋源一郎と翻訳家の柴田元幸の対談『小説の読み方、書き方、訳し方』(河出文庫)の第三章「小説の読み方」海外文学篇を読んだら、 高橋 (略)柴田訳の『パルプ』は、ブゴウスキーの原文よりいいんじゃないかなあ。あの日本語はすごい。 僕は、九〇年代の…

すすき野原

吾輩は猫である。四年程前に中國の光谷へ行つて、書店で漱石の『吾輩ハ猫デアル』の飜譯を二種類見付けた事がある。片方の、表紙に丸くなつた吾輩が坐つて居る書物を開いて見た所、冒頭に我是猫と書かれて居た。夫から「……信じられ無いかも知らんが本當であ…

泣いた小説

けさは三時に起きた。早すぎるのは体によくないと思ったが、横になるとしきりに尿意がもよほされ、用を足しに立って、頭のなかに若干なにかしこりが残ってゐるやうに感じた。就寝前に見たホラーゲーム実況のせいか、先だって悪夢を見てゐたやうな気がする。…

個人的名作アイワナ3選

即死ゲームのアイワナにも様ざまありますが、いままで遊んできたなかでおもしろかったものを3つあげてみます。私としてはどれもおすすめしたいといふやつです。 I wanna get thug life I wanna be the ねこ I wanna be the あびゃ~。 I_WANNA_BE_THE_ACTIO…

結局のところラヴコメがわからない

私は漫畫をあまり読まない。読むとしてもストーリーがおもしろいものを読みたい。絵柄は無論重要な要素だが、それより重要なのはストーリーだと思ってゐて、私のなかでこの評價が覆ったことはほとんどない。 ところでラヴコメは私にはわからない。恋愛自体に…

ドラマMR.BRAINを見る

子供の頃は早い就寝習慣といふ方針のために夜中のTVは見ず、いまでもそれは続けてゐる。通学してゐた頃は帰宅するとよくTVドラマを見てゐた。昼すぎ四時頃に戻ると他局がワイドショーを放送するなかで、テレビ朝日の相棒やNHKの子供向けの番組、もっ…

アニメAnotherを見る

以前Anotherをいとこに見せられて血が恐しかったので逃げ出したと書いた。 winesburg.hatenablog.com それ以来このアニメは一度も見てこなかったのだが、先日ニコ生で一挙放送してゐたので予約して見てみた。あれからずいぶん経ってグロテスクな表現がだいぶ…

シン・ゴジラの感想が聞きたいと言はれたので

★★★☆☆3/5 たしか押井守がシン・ゴジラに対して、庵野がなにを伝へたいのかがわからない、伝へたい事がないといふやうな事を書いてゐた記憶があるので、図書館へ行って『やっぱり友だちはいらない。』(徳間書店)を見てみたら、インタヴューの冒頭で、走れメ…

通俗バカSF映画Don't Look Up

配属が決った後の昼さがり、文芸部を訪ねて、奥に配置されたソファに寝っ転がる四年生の姿を目にした。薄汚れて清潔さの感じられない布地にだらしなく横たはって足を投げ出し、真面目に研究室に属してるとは思はれない気だるげな顔と二言三言交はして、乾燥…

フィクションのリアリティ

note.com 私は上の文章に同意する。一方で反対意見もある。 yarukimedesu.hatenablog.com 宇宙人が出てくるマンガにリアリティって言われたって…(困惑)。 フィクションにもある程度リアリティは必要である。たとへば異星人など現実にとって特異なものが出…

道すがら

けさ、早起きをして、布団のなかでスマートフォンをいぢってゐたら電池が切れた。このまま、ぼーっとするわけにもいかないと思って腰を上げ、着がへてから散歩に出かけた。公園のベンチで読まうと辞書をふたつ鞄に入れ、残高を確めるために通帳をたづさへた…

プリキュアのことを書いたら長文になった(よもやま話)

デパプリ第7話を見た。毎回食物の妖精がブンドル団にさらはれ、敵をやっつけて妖精をキュアウォッチに登録するたびに、あらかじめ保護しておきなさいよと思ふ。今回、明言してないが敵の一人が生徒会長だと露骨なので判ったし、OPにゐるタキシード仮面み…

ファンは盲目

性格はくづだが作品にはいいものがある作家についてどう思ふか。 と書くと「くづ」なんて言葉がげびてゐると言はれさうだが、性格が破綻してゐると言ひ換へても本質は同じである。 私は昔かういふ記事(https://ncode.syosetu.com/n4777y/)やそれと同じ趣旨…

井上ひさしと北杜夫

井上ひさしと北杜夫の二人には接点がないやうに見えるが、探してみると意外とある。以下私が知ってゐる範囲で挙げる。 井上ひさしは北杜夫の二つの小説に解説を書いてゐる。(角川文庫『船乗りクプクプの冒険』と新潮文庫『高みの見物』) 井上ひさしは上智…

2021年度に読んだ秀作・凡作・駄作大賞

2021年度に私が触れた書籍で秀作・凡作・駄作だと思ったものを四つづつ挙げる。なほその発表時期は2021年度に限らず、また有名なものを挙げることもある。当り前だが、これは個人的な意見であると念のために言っておかう。 秀作大賞 一等賞 富永健一『社会学…